東京2020。選手村での選手団対応ボランティア。携帯電話。
選手村には、各国から参加する国が選手団を作って入村する。
基本、選手以外に選手団団長、副団長、医師など国によって参加する人が違う。
例えば、選手が1人しかいない場合、それにつきそうコーチだけなどというケースもあるかもしれない。
何百人の選手がいる国では、団長、副団長、医師、マッサージ師、それぞれのスポーツのコーチ、など本当に様々な関係者が同伴してくる。
団体競技は選手が多いだけに、関係者も必然的に多くなる。
選手村の選手団対応にあたったボランティア達は、活動開始1週間前くらいに、東京2020からメールをもらい、どの国の担当になるか知らされる。
この時点でそれを拒否することは殆ど不可能だったと思う。
しかし、コロナ患者が多く出ている国などにあてられた人たちからは変更希望が出ていたようだ。
私はスペイン語が話せることを前面に出していたので、スペイン語を話す国の担当になった。
選手団の団長や役員はすでにほかの国でのオリンピックに参加した経験を持った人もいて、どのように進むのか、どのような手続きをするのか知っている。
活動が始まる前に直接選手村に行っての研修があり、村内を案内してもらい、選手村での規則などについて細かく話があった。
バッグは指定のバッグのみで、雨の日の長傘もいけない、折り畳み傘で来てくださいと言われた。
危険物品と思われるものを持ち込んだりできないように、とのことらしい。
しかし実際、1日目からそれは崩れた。
チェックインしている人たちを見たら、ボランティアだけではなく、選手村で仕事をする人たちも同じ場所からチェックインをするのだが、大きなリュック、長い傘、人によってはリュック+手提げかばん。
なんだ、全然大丈夫じゃん。
そもそも不可能、あのバッグ1つで動けって。
特に女性はいろいろ持ちたいので。
ユニフォームも上に違うジャンパーを着ている人、靴も違うのを履いている人、それを誰も指摘はしなかった。
いいんじゃん。
よかった。
選手団担当ボランティア達は一人一台携帯を渡された。
ラインをインストールできるのだが、すでに各自の名前で登録されていて、1000人以上のグループラインができていた。
グループラインって、こんなすごい人数でもできちゃうのね。
しかし、誰かの書き込みをある一定の人数が閲覧するとキャパオーバーで閲覧できなくなる。
それが300人なのか500人なのかわからないが、最初の頃は閲覧できないものだらけだった。
新品の携帯を渡されて、使えるようにするのは結構時間がかかる。
私は何人かのシニアの方達に使い方を教えてあげなければならなかった。
が、その後使えるようになったかは知らない。
この携帯は、東京2020が指定したアプリ以外はダウンロードできない。
時たまダウンロードできることがあるのだが、次の日もしくは2日後にはなぜか消滅している。
いくつかやってみたがやっぱり消滅するのでもうあきらめた。
ダウンロードできたのは、PCR検査の登録アプリと入村退村自己申告アプリ。
ヨーロッパはラインはあまり使われていなく、Whatsappというアプリが主流だが、それもダウンロードできなかった。
なので選手団との連絡をとりにくく、多くのボランティアが個人の携帯から彼らとWhatsappで連絡をとっていたようだ。
しかしその後、私達はこのラインアプリなくして活動はできなくなる。
いやはや、とにかく活動が始まったらわからないことだらけだったのだ。
細かく話しているときりがないのだが、一見、準備万端のように思えた選手村だが、活動内容、仕組みなどが全く知らされていなかった私達は、手探りで、それも時間がない選手たちと右往左往しながら短時間で解決しなければならない案件ばかりに立ち向かうことになった。
諸々の書類手続き、タクシーの手配、競技場への行き方、各国に割り当てられる車の手配など、本当にわからないことだらけで始まったのだが、これを解決してくれたのが携帯のラインだった。
突然誰かから、「誰か教えて~。これはどうするの?」と質問が出る。
自分には関係のない質問だが、ちゃんとそれを調べて回答してくれる人がいる。
すでにそれはこうやって解決したよ~と教えてくれる人もいる。
文章力が強い人も多々いるので、長~~~~い文章で細かく教えてくれる人もいる。
本当にこれにはたくさんのボランティア達が助けられたと思う。
愚痴や文句も並べられたが、必ずそれを収める人も出てくる。
最初の一週間は携帯のラインの音が鳴りっぱなしだった。
が、これも一週間もすると落ち着き始める。
日本人とはすごいもので、ボランティアなのに皆本当に一生懸命取り組み、調べ、選手達のために翻弄するのだ。
中には、「そこまでしなくていいよね」という案件も見受けられたが、それは個人の責任で・・・という感じだ。
私はのめりこむタイプではなかったし、一緒に活動していた人たちも同じ捉え方だったので、活動時間もきっちりその時間で対応したが、そうではない人達や、言われるままに外で買い物をしてきてあげたり連れて行ったりなどしていた人たちは多い。
思い出の残るラインアプリだが、最後は返却しなければならないのでそれを残すことはできなかった。