東京2020ボランティア。ドライバーさん。

選手村の入り口前は警備員やらが何人もいる。

彼らとあいさつを交わし、チェックインするために右側の建物の入り口に向かう。

 

しかし、ドライバーさんたちは、どうやらこのチェックインをしていなかったのか、最初の頃、入り口から左の小さな建物に向かう人がいることに気づいた。

 

「あれは何の建物だろう」と思っていた。

ボランティアユニホームを着た人がたくさんいるのだ。

休憩所なのかな?と思っていた。

この頃はまだ選手達も少なく、選手団付きのボランティアは、自分の担当の国以外の国のサポートにまわっていた。

 

のちに、その建物はドライバーさんの待機場所とわかる。

私が担当する選手団が入村して、国ごとに割り当てられる専用の車の手続きをしに、そこへ出向いたからだ。

 

1階のは行ってすぐの左側に簡易な受付があって、右側にはたくさんのお水のペットボトルの箱が積まれていた。

 

チェックインをすますボランティアは、そこで、お水、ウェットシート、塩分補給タブレット(何日かおきに1箱)、食事券などをもらう。

ドライバーさんたちはチェックインをすましていないからか、お水はそこでもらっていたようだ。

 

予約が入っているドライバーさんたちが外で待機している。

外国人は時間通り来ないので、1時間待ちは当たり前。

予約しても来ないこともあるそうだ。

他に、突然入った予約のために、ただただ待っているドライバーさんもいる。

 

しかし、この場所はなぜか明るい。

皆やたらとテンションが上がっている。

選手や選手団が来ると、「イエ~~~~イ」と言って皆で写真を撮る。

 

選手団付きの私達は、研修時から「選手村では写真撮影は禁止」と何回も言われてきた。ましてや無断でブログにあげたりはもっとダメだと言われてきた。

なのにここではなぜか大っぴらに写真撮影が行われていた。

 

私は選手団と一緒に競技場に行くときに、たいていドライバーさんの左の席に座っていたので、いろいろお話しを聞かせてもらった。

 

殆どのドライバーさんたちが「ドライバーは希望していなかった」そうだ。

 

ボランティアに応募したけど、ドライバー希望にはしていなかったが、連絡が来て、「ドライバーでもいいですか?」と聞かれたそうだ。

しかしここで断ると、ボランティアはできないかも、と思い承諾したそうだ。

 

そして、多くのドライバーさんが、地方から来た人だった。

「東京は運転したことがありません」と言うと、「全ての車にナビがついていますので、その通り運転していただけるので大丈夫です」と言われたそうだ。

そりゃ、それを信じるよね。

 

でも、横に乗った私から言わせてもらえば、「非常に怖かった」。

 

慣れない東京、ナビを見ながらの運転、少なからずあるだろうと思われる「選手や選手団団長などを乗せている責任感」。

中には「私、運転好きじゃないんですよ~」と言った人もいた。

 

ナビの目的地は、競技会場しか入っていない。

しかし、競技会場によっては、細かく入り口やパーキング場所が分かれている。

国立競技場などは、国立競技場AとかBとか4つ以上あったような気がする。

そして、ドライバーさんがその差を知っているかというと、知らないのだ。

突如マニュアル本を出してきて探し始める。

しかしそれには載っていない。

 

出発するまでにまず目的地を確定するところから始まる。

 

こちらは、車に乗れば連れて行ってくれると思っていたので、その予定時間で乗車しているのだが、そうはいかない。

1回目に乗った時は、結局団長さんは試合を観ることができなかった。

2回目以降は、迷うことも想定して乗車時間を組むことにした。

 

逆に道を知っている人も結構困る。

ナビを無視して走ってくれるのはいいのだが、東京2020用に駐車スペースや、そこへの入り口が変更されているのだ。

また、車の種類によって、パーキングエリアが変わってくる。

要人用と選手団用は乗降場所が違うのだ。

 

その上どこに行っても何もわからないボランティアしかいないのだ。

誰に何を聞いてもわからない。

 

パーキングの入り口にいる人は、その場所の事しかわからないので、そのパーキングではなかった場合、次のパーキングを探して行ってみて、またそこで聞く、となる。

一種のゲームをしているようだ。

入り口があっていれば入れるが、あってなければまたそこから探し始める。

 

毎回、ちゃんと時間通りに競技会場に着くことができるのかドキドキだった。

着いたら着いたで、今度は目指す競技がどこで行われているのか探さなければならない。

持ち物検査などがあるところでは、そのことしかわからない人達しかいないので、その先の競技会場については、全く知らないのだ。

 

全競技会場にチェックインカウンターがあって、アクレディテーションカード(IDカード)を機械にピッとやらなければならないのだが、ドライバーさんは入れない所が多い。

なので、結局車で待っていてもらわなければならない。

しかし、乗降場所とパーキングエリアが違うところが多い。

帰りに携帯に電話して来てもらおうとしても、なかなか来なかったり、ドライバーさんがまた迷ってしまったりする。

 

ドライバーさんも慣れてくればわかるようになるのだが、なにせ、競技会場がたくさんある。

慣れたころにはオリンピックは終わりとなる。

まあ、これは全てのボランティアに言えることなのだが・・・。

 

競技会場以外に、練習場という場所が競技会場の近くにある。

 

これがナビに乗っていない。

 

水泳で言えば、アクアティクスまで行ってもらい、私たちはその横にある小さな練習用プールまで延々と歩くのだ。

そしてこの場所を知っている人はアクアティクスにいなかった。

本当に、誰に聞いてもわからなかった。

 

どうやってわかったか。

練習に来ている選手にグーグルマップで送ってもらったのだ。

それでも、とても分かりにくく、あの日は本当に暑い中、広い広いアクアティクス会場の周りの道をひたすら歩いた。

 

毎日、わからないことだらけ。

その上、誰に聞いても明確な答えを出してくれない。

 

多くのドライバーさんたちは、小さなメッセージカードや、折鶴や日本のちょっとしたお土産などを持参していた。

そして乗ってくれた選手や団長さんに渡していた。

こういうのは日本人だな~と思う。

 

でもドライバーさんたち、PCR検査あんまりしていなかったみたい。

私たちは、当初3日おきとか言っていたけど、すぐに毎日になって、毎日検体提出していたけど、ドライバーさんたちはあんまりしていなかったみたいだし、選手村の私たちが使っていた食堂も使えなかったみたい。

 

なんだか、待遇が違うな~と感じたのは私だけではないと思う。

 

とても明るくて皆いいひとばかりだったし、車内でいろいろおしゃべりできて楽しかったけれど、東京2020に言いたい。

 

「ドライバーさんはプロの人に頼んだ方がよかったと思います」。

 

大きな事故がなくて本当に良かった。

(無謀な運転とかいろいろあったみたいだけどね)

 

あ、そうそう。

ドライバーさんから聞いた話しだけど、最初の頃「少々のスピード違反や駐車違反は見逃してくれるようになっている」というようなニュアンスのお話しがあったそうです。

でも、途中からあまりにひどいことが度々あったのでそれはなくなったとか・・・。

「見逃すようになってる」ってどんだけすごい力なんだ、東京2020・・・?